七瀬弥生

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駅の改札を出たら、なんだかいつもより足元が明るく感じた。
釣られるようにロータリーの真ん中に目をやる。

あ、もうそんな季節。

いつの間にか現れた大きなモミの木に色とりどりの電球が巻き付いてチカチカしている。
そう言えば帰り道の商店街ではジングルベルが流れていたような気がする。

私が小さい頃、この時期になると母は私を車に乗せて少し遠くにある高級住宅街に連れて行った。
隣近所と競い合うように家を飾る派手なイルミネーションを見るためだ。
豪華なご馳走も、たくさんのプレゼントも用意できない貧乏な家で母が私にクリスマスを味わわせるために考えたせめてもの作戦だった。

今では自分でケーキもチキンも、プレゼントだって買える。
それでも私のクリスマスは、この色鮮やかな小さいライトがなくては始まらない。

12/14/2023, 10:40:04 AM