よいどれ侍

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コンッコンッ


おや、誰か来たようだ、扉がなっておる。

こんな時間におれを訪ねてくるとは、いい度胸していやがるじゃないか。

どれ、いっちょ、どなりちらかしにでも…


コンコンコンッ


…いや、待て。

今は、a.m 4:00。
へべれけに酔い狂ったこのおれに、用のある奴などおるわけがないだろう。

毎日遅くまで飲むとはいえ、騒音をたててまで周りに迷惑かけるのんべぇは、おれはでぇきらいなんだ。いつもしっぽりとやってるおれに、さすがにクレームなんてねぇだろ。


コンコンッコンコンッ


あ…?でも、よく考えると、おれ、今来たやつを、これからどなりちらかしにいこうとして…

よくねぇよくねぇ!こんな時間に…それはまったく、おれのポリシーに反する行動だ。ほんと、それだけはよくねぇってこった。


ここは、スマートに対応するのが紳士ってもんよ。大人の常識…おれにだって、多少の教養はある。


コンコンコンコンコンコンコン


息を整え、おれは扉を開けた。



「おらぁっ!!貴様こんな時間になぁぁんの用があって、こんなとこまできてんだよぉー?!!ここいらの酒全部ぶちまけてやろうか、おぉうら!?」


「もう、お店閉めますよ。何時間もトイレにいて、何してんですか。」――




――気づけばおれは全力の土下座を決めていた。
おでこが極限まで擦り減る程、その場に平伏し謝り散らかした。

その後はちょっぴり多めの金を支払い、
颯爽と(店主からは逃げるように見えたかもしれんが、誰が言おうと決してそんなつもりはないのである。品性漂うイケオジのような、そんなスマートさや風格のイメージをもって)店を後にした。



嗚呼、朝混じりの夜風がなんだか心地良い。

誰か、おれに慰めの一杯でも恵んでくれやしないだろうか。

10/3/2025, 4:54:44 PM