Ton_Ton

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 階段を上に登ったら右側の通路に抜けて、窓の無い無機質な部屋に出る。向かって左側の壁に四角いボタンがあるから手のひらで押してやると、隠し通路が現れて、奥へ導かれる。中に入ると暗闇を手探りで進み、しばらく歩いた先に怪しい突起物を見つけた。視覚が遮られた中で突起物の正体を突き止めようと、指先で撫でたり匂いを嗅いだりするが、どうにもよく分からない。
 この突起をへし折ることが出来たら、先に進むことが出来るはずだ。僕は突起を折るために後ろに振り返って安全を確保してみたり、自己研鑽の為に筋トレをしてみたり、効果的な折り方を頭で考えてみたりして時間を浪費する。暗がりの中に閉じこもっている。
 僕が足踏みをしている隙に周りの者はゴールへと近付いている。僕が言い訳をしている間に明るい世界へ脱出しようとしている。僕が悲観している間に冒険は成熟していく。

 結論として突起物は決してへし折ってはいけない。それは次の部屋に進むためのレバーなのだ。僕は心のどこかでそれを分かっているのかもしれないが、どうにもレバーを引く気にはならず、迷いに迷った挙句、へし折って突破しようとするのだ。

11/12/2025, 3:20:34 PM