誰よりも、ずっと
昨日は雨だった。東京では、せっかくの桜も葉桜に変わったらしい。桜前線がこちらへたどり着くのはこれからだが、蕾は保ってくれただろうか。
20分ほど車を走らせると、桜の名勝がある。週末は県外ナンバーが長い渋滞を作るので、行くなら平日だ。と言っても、駐車場に止めるわけではない。そばの道を通るだけ。別に観桜料を惜しんでいるわけではない。少し離れたところからほんの数秒間、スピードを落として眺めるのが好きなのだ。
樹齢1000年を超える枝垂れ桜。太い幹が分かれて四方に枝を広げている。観覧者は近寄ると必ず、木の周りをぐるっと一周する。上の通路から見て、降りて下から見て、1番よく見えるところを探すのだ。でもなかなか1番は決められない。逆にそこが魅力なのだろう。
高校生の頃にそばで見たことがあった。もちろん観桜料を払って。
表皮だけ見るとさすがに老いを感じたが、それでも毎年満開の花を咲かす。まさに姥桜って感じだ。なにしろ1000年だからね。1000年前は平安時代だ。そこからずっとこの町の人びとを見てきた。1000年だよ、すごいよね。
この姥桜には、人の歴史はどんなふうに見えるのだろう。きっとこの町で誰よりも詳しいんだろうな。いい人もいただろうしそうじゃない人もいただろう。これからもずっと見続けるのかな。そうであって欲しい。
僕のことはどう見えるのだろうか。よくいる普通の男か、何か特別な男か。まあ前者だろうけど。
変な話だ。観るのはこっちのはずなのに、どう見られるかこっちが気にするなんて。
久しぶりに今年は近くで見てみようかな。靴も磨いて、ちゃんとネクタイを結んで。
4/9/2024, 11:06:09 PM