「あれは飛行機雲じゃない。線路雲だ」
眩しそうに目を細めながら、師匠は言った。
青い青い空に一本の線が走っている。
少しもくねらず、一直線。定規を押し当てて引いたような見事な直線だ。
俺はそれを飛行機雲だと思った。
ああいった線状の雲が現れるときは、大抵飛行機が関わっている。排気ガスに含まれる水分が、上空で急冷されることで雲になるらしい。冬に吐息が白くなるのと原理的には同じで、つまり飛行機雲とは、飛行機の吐息と言えないでもなかった。
飛行機の吐息。
なんだか詩的でいいじゃないか。
そんなことを考えて浸っていると、いつの間にか師匠が隣に立っていて、唐突に言ったのだ。
線路雲と。
そんなものは聞いたことがなかった。
「線路雲って。飛行機雲の間違いでしょう?」
「いいや。飛行機じゃない。現にお前、飛行機の音なんてしなかったろう」
「まあ、確かにしませんでしたけど」
「だろう。あれは線路雲なのだ。じきに列車が来るぞ。耳を澄ませば……ほれ、蒸気機関だ」
そんな馬鹿な。
師匠に倣い聴覚に意識を集中させる。
すると遠くから、微かに「シュッシュ」と聞こえてくる。バラバラなようでいて実は規則正しい、蒸気機関の吐息だ。
・時間がなかったのでここまで
お題「遠くの空へ」
4/12/2026, 1:04:14 PM