風花

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『猫』

冷たいコンクリートのビルの隙間
ネオンの光も幽かに差すだけの誰も知らない隙間

その隙間から闇色を纏った一匹の見窄らしい猫が
美しすぎる金色の瞳に疲れ切った都会を映している

猫は光の中に飛び込むわけでもなく
ただ暗がりから街を見つめ
やがて暗闇に吸い込まれていく。

かつて我が物顔で歩いていた気高く美しい猫達は
ネオンに夜を奪われた。

彼らは光も差さない物陰で
街の明かりが消える日を待っている。









7/9/2022, 2:40:47 AM