はじめて君と会ったのは、私が落ち込んで1人泣いている時だった。
仕事でミスして怒られて、歩いてるだけで何かにつまずいてコケるし、買ったばかりのタイツはダメにするしで酷い1日で⋯⋯嫌になって仕事終わりに公園のベンチで静かに泣いてた。
そんな時に、にゃあって声かけて隣で寄り添ってくれたのが君だったね。
漆黒の猫ちゃん。触っても嫌がらずに寧ろ擦り寄ってくれて、凄く癒やされたのを覚えている。
あの日から毎日を君と過ごして、何度も家においでって言ったのに袖にされ続けた。それでもここに来続けたのは、いつか君の気持ちが変わって私のお家に来てくれるんじゃないかって下心から。
でも結局そんな日は訪れないまま、世界は終わりを迎えるらしい。
数ヶ月前から仕切りに報道されるニュース。
いきなり軌道を変えた巨大な隕石が地球に向かっていて、撃ち落としても細かな破片が地上に降り注ぐからとか何とか。でも、運が良ければ生き残れるらしい。
この数ヶ月間考えに考えた結果。私は今までの様に君と過ごして一緒に最後を迎えたいと思った。
それでもし、運が良くて一緒に生き残れたのなら⋯⋯救われる気がするから。
その為にこの公園に来て、いつものベンチで待ってたけど⋯⋯今日に限って君が来ないの。
待ってる間に差し迫っていく時間の中で、きっと届いても君には読めないであろうこの手紙を書いています。
たくさんの癒しと思い出をありがとう。もし、一緒に生き残れたらまた何処かで会いたいです。
それが叶わないなら、せめて君だけでも安らかに眠れるように願います。
そして死後の世界があるのなら、あの日君と見た虹の橋を―――君と一緒に渡りたいです。
◇ ◇ ◇
それは私がはじめて隕石の欠片の落下地点を見つけて2週間程経った頃。
ある街中を歩いていると、にゃあと可愛い鳴き声が聞こえて、その声のする方に向かって歩いていた時だった。
猫の鳴き声はするのに、全く姿が見えなくて⋯⋯それでも声のする方へ進むとその先には公園があった。
中に入るとアスレチックが併設された大きな滑り台の残骸があり、その奥にはベンチとそこに座る少し焼けた人がいる。
その人は背後にカバンを置いていて、申し訳なく思いながらも⋯⋯そのカバンの中身を見させてもらった。
すると、彼女の最後の手紙が見つかり一緒にいたかった猫ちゃんの事が書かれていた。
私はその付近を探し、それらしき黒猫が花を咥えて息絶えているのを見つける。
『君が私を呼んでたんだね。大丈夫、任せて!』
ちょっとごめんね。そう言ってからその子を抱き上げてあのベンチまで戻った。この子は周りの木が守ってくれていたらしいが、やはり少し焼け爛れている。
猫ちゃんを彼女の膝の上にそっと寝かせて、彼女の手紙は鞄の中に戻しておく。
『2人で虹の橋、渡れると良いね。良い旅を』
そう2人に伝えてから、私はその場を後にする。
いつか、私も綺麗な虹を渡れる日が来るのだろうか?
そんな、事を思いながら⋯⋯瓦礫と死臭のする街を、旅していくのだった。
2/22/2025, 1:18:24 PM