未知亜

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 きみと話していると時間が風のようだ。
 あっという間に吹き過ぎて私は容易くさらわれる。
「そろそろ」ときみが言う。
「そうだね、そろそろ」と私は言う。
 いちばん言いたいことはきょうも言えなくて。
 届くわけのない言葉を言外に籠める。
「じゃあね、また」(好きだよ)
「うん、また」
「あっ、えと、風邪ひかないでね」(好きだよ)
「うん、敬ちゃんも」
「またね」(きみが好きだよ)
「何回言うの」と笑ったきみが、咲く花の潔さで手を振った。
 風の中で遠ざかるあわい背中に私は呟く。
「……一回も、言えてないよ」

『好きだよ』

4/5/2025, 3:18:24 PM