ミキミヤ

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「ミネルバ、私が中2の頃の写真を見せて」

AIに語りかければ、「かしこまりました」の声と共に、空中に無数の写真が投影される。それを手でスワイプして順番に見ていく。
親友4人で同じ色のハチマキをして肩を組んで笑っている写真が目に入る。中2の体育祭の写真だ。

「この頃は4人同じクラスでずっと一緒にいたなあ。懐かしい……」

中学からの親友。今も交友はあれど、それぞれ違う道を進んで会う機会は減ってしまった。それが、久々に来週会えることになって、思い出を振り返りたくなったのだ。


「ご主人様、『懐かしい』とはどのような感情ですか」

ただただ楽しかったあの頃を思い出していると、AIのミネルバが言った。
ミネルバは普段は私の言動を見て勝手に学習しているようだが、たまにこうして質問をしてくる時がある。

「えー、なんだろう。過去を振り返って『あの頃は良かったなあ』とか『楽しかったなあ』とか思う気持ち?」
「過去の記録を参照することで当時の感情を想起するということですか」
「うーん、それだけじゃないんだよね。当時の感情だけじゃなくて今の思いも含んでるというか……」

私は頭を悩ませた。『懐かしい』って感情の言語化、結構難しい。

「うまく答えられないや、ごめん」
「いえ、ご回答ありがとうございました」

それっきり、ミネルバは沈黙した。

ミネルバには感情はない。『楽しい』『嬉しい』『悲しい』など人の状態として記録することはできても、その感情になることはできない。
それでもこうして質問してくることが、感情に関して理解しようと努力してくれてる感じがして、私は嫌いじゃなかった。

もしも、ずっと未来、ミネルバが感情を得る日が来たとしたら。私とのこんなやりとりを懐かしく思うこともあり得るだろうか。
そんな日が来たらいいなと、私は思った。

10/30/2024, 2:12:03 PM