hashiba

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片付けを手伝ってくれるのはありがたいが、段ボールの奥に隠したアルバムを掘り出して無断で見始めるとはデリカシーの欠片もない。しかも悪びれるどころか「細い」「何か今より目つきが悪い」「服どうなってるのこれ」などなどページをめくって言いたい放題である。スマホがないどころかガラケーにカメラもなかった時代、今その写真を見ている彼と出会うよりずっと前。何者にもなれず情動ばかり持て余した、どこにでもいる大人未満の若者だった。「そんな古い写真、処分したとばかり思っていた」気恥ずかしさからつい言い訳をしたら、彼は嬉しそうに「捨ててなくて良かった」と笑う。それはきっとただ愉快なだけなのだろうが、どうしたことだろう。自分の中に欠片だけ残ったあの頃の自分が、今初めて顔を上げた。何者でもなかったものが、大切な人になぞられて輪郭を持つ。憑き物が落ちたような気分だった。


(題:あの頃の私へ)

5/25/2024, 7:49:21 AM