大狗 福徠

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極彩色の中に埋もれる。
頭一つ抜きん出る真黒の私は、溶け落ちていた。
棺桶を焼く炎よりも、余程熱い36.4度が襲い来る。
私は、溶け落ちていく。
炙られた蝋燭のように。
放り出された氷のように。
私は、打ち捨てられている。
抜きん出た黒は薄れ濁って極彩色を穢していく。
誰も彼もが私を掬い取り濁る。
私の意思などはなく、身を千切られるだけである。
私は、
夢が覚める。
同じ夢。
変わることはない。
活動を始めて数年。
何時からかあのような夢を見る。
気にすることはない。
気にしてはいけない。
筆を取る。
描く必要がある。
私だけに映る極彩色を。
私だけ、私だけが映し出すのだ。
夢の極彩色がにじみ出る。
現実に干渉されている。
思わず塗りつぶしたその色は、その色は夢で見た真黒だ。
筆を落とす。
真黒が広がる。
溶けるように。染み込むように。
熱で焼かれ硬くなっていく。
打ち捨てた真黒が極彩色を汚す。
願望であった。
誰かの心に残りたい一心だった。
心を締め付けたかった。
体に染み付きたかった。
夢となっても叶いやしない。
残ることはできなかった。
染み付くことはできなかった。
締め付けることはできなかった。
叶わぬ夢ならば。
叶わぬ夢であるならば。
知らないままで良かったと、極彩色に真黒をぶち撒けた。

3/17/2025, 11:57:40 AM