郡司

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七夕

各地に諸説あるが、太陰暦では農事暦のひとつでもあったという七夕。旧暦では本日はまだ6月2日だ。現在の七夕は農事暦としての機能を持たない。

新婚夫婦が仕事を放り出し、世話されない牛たちは痩せ細り、布地が織り上げられないことは不足を招いた。そりゃお父様(天帝)が怒って当然。まじめに仕事に勤しめば一年に一度だけ会えるにしても、カササギの橋とは念入りな制限だ。詩経にも出ているふたり、大昔だね。

まだ織姫と彦星の物語はほのぼのしいと思う。

「恋する男という悪魔」、と言えなくもない者たちが、私の住処に来ては各々「愛を叫ぶ」。“彼女以外はどうでもいい”と宣うところは共通している。まさに彦星だ。一人は“俺の嫁自慢”を来る度にぶち上げ、一人は私に注文をつける。曰く、“ものの見方が広がる文言をあの娘に与えないで”と。翼を自覚させてくれるな、自分から離れてしまう、と。気持はわかる。だが賛同はできぬ。恋は恋だがまだ愛ではない。愛へ突き抜けろ、友よ。こころを尽くし表現を豊かに、自分を信じ彼女を信じてその心へ向かえ…

今のありのままを喜んであげてほしいと、婆の私は思うのだ…。私の出す文言は、すべて人間に隠されてなどいない事実だ。子ども達もあるのだから、できる限り日常のやりとりのなかにエッセンスをぶちこむ。日常は生きる場所だ。誰しもそうであるように、私の日常もまた、くだらなくなどないし、つまらないものなんかじゃない。私の日常に転がり込んできた子達に、それを伏せることは無理なのだ。

七夕にはとかく、「ロマンチックフィルター」をかけた再会ばかりクローズアップされるが、真に“ふたりぼっち”で生き続けることなど、まず無い。「どうでもいい」を通せないのだ。織姫と彦星にはまだ先のゆくえがありそうにも思える。

7/7/2024, 3:30:47 PM