望月

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《桜散る》《無色の世界》

 世界の中心には、大きな桜の木が据えられていた。
 樹齢千年は有ろうかという大樹だ。
 それを取り囲む桜の木々は、それよりかは些か歳若い木である。それでも、何本も並ぶその様は一本の大樹に劣るとも限らない。
 けれど、矢張り、気が付けば大樹に目が移るのだ。それほど美しく、魅せられる。
 それだけに、大樹に咲いていた花が散ると、世界は色を喪った。
 実際は、大樹の他に花は咲いているというのに。

「君がいなくちゃ、僕にとっては誰も同じだよ」

4/19/2024, 2:04:02 PM