「現実逃避」
今度こそ死んでしまう。手が届かない。あと少し、ほんの少しだけだから、だから__。
願いは虚しく散るものだと、神はいないのだと知らしめられる。彼を救えなかった。2回だ。1回目は、彼の自己犠牲によるもの。その時は、みんなが協力してくれた。
2回目、今回はわたし一人だけ。今回も彼がわたしを助けてくれた。
救助が来たのは、彼が死んだすぐ後だった。
なんてひどい悲劇だろうか。わたしが手を伸ばして彼の腕を掴めたら、彼と手を離さなければ、彼は死んでいなかったのに。
泣いた。無様に、哀しみに、自己嫌悪に、助かったことへの安堵感に、彼を失ってしまった喪失感に暮れ、ずっとずっと泣いた。そうすれば、彼は同情して今にもわたしを慰めてくれると思っていたから。
彼がわたしを抱きしめてくれると思い込んでいるから。
なんてひどい自分勝手な現実逃避であろうか
2/27/2024, 2:06:57 PM