『子供のように』
子供のように笑う君が好きだった。
無垢な君なら、僕を受け入れてくれるだろうという打算で付き合った。
けれど、今の君はどうだろう。
目を伏せて、唇を閉じたまま緩く口角を上げる姿は、まるで大人のようだった。
初めて見る年齢相応の笑顔だった。
あぁ、何を知ってしまったんだろう。
僕が本当は、悪い人間だと気付いてしまったのか。
君は、“騙してたんだね”とは言わなかった。
静かに、「別れよう」とだけ、口にする。
それは一重に、君の優しさだった。
涙がこぼれる。
こんな僕でも、浅ましい打算で君と付き合った僕でも。
いつの間にか、子供のように声を上げて泣いてしまうほど、君を愛していたみたいだ。
10/13/2023, 10:24:50 PM