無人島に行くならば
きっと、想像力が豊かなのだと、そう思う。
それを話したところで、現実的にはありえないことだ。
無人な島に辿り着くには、どのくらい波に流されればいいのだろう。
いや、行くならば、と言っているのなら、わざと流れにいっているのか。そうしないと、持っていきたいものを持っていけないから。
「馬鹿らしい」
「はあ?お前、今なんつった?」
現実的に考えてしまう俺は、想像力が豊かな人と分かり合えない。
だからといって、今発した言葉は自分でも違う気はした。
「いいだろ、夢があって。齋藤は憧れねえのか?」
不意に質問が回ってきて、思考を巡らせる。無人島に憧れを持つということは、どういうことだろうか。
「……それは、脱走したいということか?」
「馬鹿!……そんなわけねえだろ」
そう言う割には、急いで近づいていて小声で話してくる。
無人島。それは夢のような世界かもしれないし、現実よりも辛いものかもしれない。しかし、不確かなものというのは、希望だけを信じる。
「まあ、希望を持つことはいいことだ」
その言葉を放つと、左之助は間抜けな顔をして固まっていた。
もしかして、そんなに深く考えていなかったのか。
「あ、ああ……それで、齋藤は何持っていきたいんだ?」
こういう場合、基本的には持っていける物はひとつだ。だが、俺の考えだと流れにいっているのなら、便利なものを何個を持っていくのがいい。
そんなことを話して何個も案を出したら、それこそ左之助に馬鹿にされてしまう。
ここは常識というものに従って、ひとつだけ案をあげよう。仕方なく。
「俺は、刀さえ持っていればいい」
「へー、俺とかじゃねえんだ」
「馬鹿言え」
そういえば訓練中だったことを思い出し、木刀を力強く握り半丸頭で鳩尾を狙う。
「いたっ!……齋藤!」
無人島なんて夢のまた夢。
来世に期待して、俺達は今を生きる。
10/23/2025, 11:34:34 AM