イオリ

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これまでずっと

 新しい靴を履いた年上の彼女と街を歩く。

 映画を見たあと喫茶店でコーヒーを飲んだ。

 店を出たのは4時半頃。スーパーで買い物して帰ろう、という流れ。

 ごめん、ちょっと待って。 彼女が言う。

 なに、どうした?

 ちょっと靴擦れ。かかと痛い。

 大丈夫?おんぶしてあげようか?

 やめてよ、大げさな。そこまでじゃない。でもちょっとだけゆっくり歩いて。

 わかった。


 言葉通り、ゆっくり歩く。後ろから来た人に次々と追い越されていく。なかには、このふたりはなんでダラダラしてるの、というような顔をして行くおばさんもいた。

 ごめんね。

 いや、全然。急ぐ理由もないし。真っ直ぐ帰る?スーパー寄らずに。

 だから大丈夫だって。

 そう言ってまたノロノロ歩きを続ける。


 ゆっくりだ。実にゆっくり。イライラしてると言いたいわけじゃない。ゆっくりだなぁと思った。ただ、それだけ。

 ん?あれ?


 あのさ、僕、歩くの早い?

 んん、うん。まあ、ちょっと。

 いつも?今までずっと?

 んん、まあそうね。

 なんだよ、言ってくれればいいのに。

 大丈夫。  彼女が笑顔で言う。

 そういうのは私がちゃんと合わせてあげるから。でも今日だけはごめんね。


 
 うぅ。そうだったのか。気づかなかった。これは彼氏としてあるまじきことだったな。

 
 いつもありがとうございます。

 

7/12/2024, 11:09:15 PM