『たくさんの想い出』
――私には、たくさんの想い出がある。小さな頃から、私は両親から愛されていた。可愛い服を買ってもらったり、旅行に連れて行ってくれたり、外食をしてくれたり。両親のあたたかい愛を、私はたーくさん貰った。
「……いーち」
――次の愛は、恋人から。恋人は、私の頭の中をふわふわにさせるくらい、甘やかした。遊園地デートに行ったり、キスをしたり、朝まで過ごしたり。恋人のまっすぐな愛を、私はたぁーくさん貰った。
「……にーぃ」
――最後の愛は、子どもから。子どもがくれるのは、無邪気な心から溢れる、優しい気持ち。私の似顔絵を書いてくれたり、抱きしめてくれたり、褒めてくれたり。子どものやわらかい愛を、私はたぁーっくさん貰った。
「……さぁーん」
私ね、たくさん愛を貰ったの。両親から、恋人から、子どもから。だからね、私は幸せなの。ずっとずーっと、幸せなのよ。
「うふふふふ。あはははは。んふふふふ……」
「あの。この人のご家族の方って」
「あぁ……その人、いないのよ。ご両親から全く愛されなかったうえ、交際していた恋人からは無理やりの行為をされ、生まれた子どもにも嫌われたって。それで精神が狂ってしまって……結果、自分は幸せな生活をしていると、大人になった今でも妄想しているのよ」
「そんな……助けてくれる人とかいなかったんですか?」
「残念ながら。彼女の頭の中には、今もずっと、【架空】の想い出しかないのよ」
「あはははは……うふふふふ……」
11/18/2024, 2:50:07 PM