まる子

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「ねぇ、ママ赤ちゃんどこ行っちゃったの?」
ママは天井を向いて答えた
「お空にねぇ、赤ちゃん帰っちゃったのよ」
まだ幼い私には当然分かるはずがなかった。
「赤ちゃんは今、お空のどこにいるの?」
母から一粒の涙がほほをつたっていく
「ちぃちゃんはね、とっても綺麗なお花畑にいるのよ、、、」

「ねぇ光介、あなたももういっちゃうの?」
私は不規則な心電図を眺めながら静かに語った

お花畑って言ったら、美しく色鮮やかに咲かせる花を想像することでしょう

きっと、そう、彼だって

私は愛人の頬をそっと撫でた
生暖かい彼の感触が私の涙をこみ上がらせる
「生きてると思うんだけどなぁ、、、」


「ねぇ、お互いいつ死ぬかわから無いんだよ?」
「またそんなこと言う」
「本当の事だよ,だから僕は君との時間を大切にしたいんだ」
思っても見なかった、彼がこんな目に遭うなんて、、、
「もし、あの場所でちぃちゃんにあったら、ちゃんと、ちゃんと、守ってね、そしていつか、私と出会ったら、あなたの胸元でたくさん泣かせてください、、、」
私はまだ生暖かい彼の手を強く握った。
その瞬間一定だった心電図がピョコンと上がった、まるでそれは返事をしているかのように
私は涙を強く拭き取った



お花畑は残酷なほど美しい、人や虫を魅了させる
だけど花は枯れてしまう、今までの美しさとは反比例するかのように
「バイバイ、光介」
そこにたどり着いた人間は時を忘れて無我夢中になるだろう。
美しいものこそ弱いのだ
花だって、踏んだり、焼いたりさえすれば跡形もなく消える、蝶だってすりつぶせば粉々になる
美しい容姿や心の持ち主は、みんなからいじめられる。最初から綺麗事なんて通用しない
残酷を知って初めて美しく輝き始める。
私だってそう、現実を知った
今の残酷さだって、、、苦しんでも、叫んでも、あがきもがいても、どんなに人や神を憎み、恨んだって、もう彼は帰って来ないってことも
現実と残酷さがそう、教えてくれた
もうこれでいいんだと誰かが叫んでいる
苦しい、辛い、死にたい、呼吸ができないの、彼を、彼を、私のもとに返えして!!
今だってそう、彼が私の中で「生きてるって」訴えかけているの!!
彼女はモニターが鳴り響く部屋の中で、ヒステリックに叫んだ
「彼はまだ生きているの!!」

死神が嘲笑うように言った
「バカな人間もこの世にいたもんだな」
その死神は、女を見たあと自虐的な笑いをし、悲しそうに去っていった。

9/17/2023, 4:52:29 PM