たろ

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【何気ないふり】

親しげに腕を組んで、親密そうな様子で寄り添う2人分の人影。
小柄な女性が組んだ腕を引いて、隣の男性の耳元へ何か囁いていた。
その横顔はとても嬉しそうで、遠目に見ても大層お似合いだった。
(街なかで、知らない誰かと一緒に居る知り合いに遭遇した時は、無闇矢鱈に声を掛けないのが、マナー。)
自分に言い聴かせているのが滑稽で、そっと2人に背を向けて、足早にその場を後にした。

モヤモヤとする負の感情を胸の奥に押し込めたまま、しばらく何気ないふりで日々を過ごした。
(気の迷いは、誰にでもあること。)
理解はしていても、辛いものは辛い。
(どうするのが一番良いだろう?やっぱり、普通に結婚して幸せになって欲しい。)
苦しいけれど、大切な人の幸せは祈りたい。
大切な人の大切な人を守れるなら、この苦しさも少しは報われるのではないだろうか。
(何だって良い。役に立てて、関係を壊さずに近くに居られたら、それで充分だ。)
軽蔑されても、どんな扱いでも良いのだ。
どんな形であれ、あなたが傍に居てくれるだけで、充分なのだ。

3/30/2024, 1:09:01 PM