シオン

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 たまに、本当にたまに疲れすぎて住人の住んでない家から外を眺めることがある。
 住人がいるとこを選ばないのは、人形になって自由を失っている彼らの近くで、自由を持っているにも関わらずぼぉっとするのは申し訳ない気がするからだ。
 窓の外を見てるのは普段生活している分には変化がないように見えるこの世界が、実は小さく風で木が揺れていたりだとか、そういう様子が見えるから。
 今日も疲れてしまって、アパートの一室から外を眺めてると、演奏者くんが歩いてるさまが見えた。
 彼はきょろきょろと辺りを見回していた。色々な場所を覗くような動作もしてるから、もしかしたら何か探してるのかもしれない。
 演奏者くんが捜し物するなんて珍しいな、なんて重いながら窓越しに眺めていると、演奏者くんが顔をあげた為、バッチリ目が合ってしまった。
 バレてしまった、なんていうまるでストーカーのような思考が浮かんだが、彼の方はボクの姿を確認したあと、満開の笑みで笑った。そして、足取り軽く去っていく。
 …………もしかして、探していたのはボクのことか? なんて自惚れた考えが浮かんで頬が熱くなっていくのが分かった。

7/1/2024, 2:45:33 PM