Ryu

Open App

所詮、夢の話だ。

死んだはずのアイツから、電話がかかってきた。
「最近、どうしてる?」
どーもこーもない。
お前がいなくなってから、ずっと泣き通しだ。
涙が乾く暇もない。
「夜空の星にはなれなくてさ。深い海の底にいるよ。」
なんでまた。
星になって輝いてるものとばかり。
「俺の分も、幸せになってくれよな。」
電話が切れた。
泣きながら目を覚ました。

双子の兄貴。
片腕を失ったような喪失感。
二人のヨットでいくつもの荒波を制覇した。
セーリング競技の日本代表チームの中でも、
お前はひときわ輝いてた。俺の自慢だった。

死因は、居眠り運転のトラックによる交通事故。
そんなお前が何故、暗い海の底にいるのか。
ヨット界のスターだったお前のことだから、
夜空でひときわ輝いてると思っていたのに。

まあ、所詮、夢の話だ。
深く考えたところで意味もない。
ただ、ひとつ気になっているのは、
「もし俺が先に死んだら、遺灰は大好きな海に撒いてくれ。」
遺言の通りに決行したこと。

このまま、お前の分まで幸せになっていいのかな。
余計なこと言わなければ良かった、なんて、
後悔してたりしないだろうか。

まあ、所詮、夢の話だ。
だけど、ごめん、俺がもし死んでも、
遺灰は海でなく、お墓に納めてもらうようにお願いしておくよ。
俺の大好きだった兄貴が、身をもって教えてくれたことだからね。

まあ、所詮、夢の話だけど。

1/20/2024, 2:49:33 PM