小さな可愛らしいデザインの缶を取り出して、テーブルにことりと置いた。
「なにそれ?」
「金平糖」
「冷やしといたの?」
「そう」
彼は星空があしらわれた缶の蓋を開け、長い指先でピンクと白の小さな粒を二つ摘んで口に放り込む。
「甘くねぇ?」
「甘いの好きだもん」
今度は水色。
「いや酒に合うかって聞いてんの」
言いながら作った水割りを二つ置いて、俺も一粒摘んでみる。
「あっまっ!」
砂糖の塊だから当然だ。俺は一粒だけで懲りてすぐに水割りを流し込んだ。
彼は寄越された水割りに無造作に摘んだ金平糖をぽいぽいと放り込む。小さな粒が泡をまとわせながらグラスへ沈む。
「たまにはこういう飲み方もいいよぉ」
「俺はフツーでいいや」
焼酎の量が少し多かったようだ。喉が熱い。彼は長い指でグラスを持ち上げ、水割りをゆっくり流し込む。砕けた氷と金平糖がグラスの中で踊り、カラカラと高い音を響かせる。
小さな星が彼の中へ消えていく。
凍てつく星を飲み込んで、世界を創った神のように彼は笑った。
END
「凍てつく星空」
12/1/2025, 4:06:03 PM