妻が,オノマトペ症候群という奇妙な病気にかかった。「オノマトペ」というのは,擬音後のことで,妻は,何をしていても,自分の行動に合った擬音を声に出してしまうようになったのだ。歩く時は「テクテク」,見回す時は「キョロキョロ」,寝ている時さえ「スヤスヤ」と寝言で言う。しかも,擬音以外の言葉を話すことができない。とても珍しい病気で,治せる薬も医者も存在しない。手を尽くしても一向によくならない病状にイラ立ち,私はだんだんと妻に冷たくなり,暴力も振るうようになってしまった。妻は,「シクシク」と言いながら,毎日泣いた。それでも私の暴力は続いた。ある日,妻は「スクッ」と言って立ち上がった。 「テクテク…ガチャ。スッ…テクテク……」「おい, そんなもの持って来て,何をする気だ?」 「ダッダッダブルンブルン」 「やめろ,危ないだろ!そんなもの振り回すな! 」 「グサッ!」「痛いっ!」「グサッ!グサッ!」「うっ!」「ズバッ!グチャッ!グリグリ……」「や,やめてくれ……」「グサッ!グサッ!グサッ!…ケラケラケラケラ」
4/17/2023, 10:53:53 AM