お題《星空》
先人たちの魂が行き着く先。
星の海を見上げれば――。
たとえどんな罪人でも。
僕にとっては。
星がたくさん流れる草原に墓石はあった。
自ら石を採りにいき、その石を加工し、生前彼女が愛した星に一番近い場所に墓石を建てた。
――僕にとっての彼女はただの“女の子”だ。
やさしくてあたたかい、彼女のつくる料理はとびっきり美味しい。スープにはレモン果汁に、やわらかく煮た月豚の角煮がトロトロ。香辛料でちょっぴりスパイシーで。
それでも世間にとっては“人殺し”。
騙されたのだとしても、それでも“罪人”。
それでも僕とっては。
“スープの味見してくれる? ちょっと今日のは失敗しちゃったかも”
それでも僕とっては“彼女”だ。
オレの世界に人はいない。
生まれてきた時に祝福してくれた奴はいない。
でも小さな月色の猫だけがそばにいてくれた。
どんな時もそばにいて、一緒に眠って、ごはんを食べて、たくさんの風景をみて。
ずっとそばにいたけど、でもオレより先に年老いてゆく。そして最後――力なく鳴いて(泣いて)、そのまま星の海にかえった。
全部、全部、覚えてるから。
おまえのことは、オレが憶えてるから。
星が流れてゆく。
小さな墓石に月色の花をそなえて。
先人たちの魂が行き着く先。
星の海を見上げれば――。
7/5/2022, 11:07:26 AM