傾月

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階段を下り砂浜に立つ
足が砂に沈む
靴を脱ぎ裸足になる
砂はひんやりとして心地良い
夜明け前でまだ薄暗く辺りに人気は無い
少し強い風に髪が乱される
沖合で白波が立っているのが見える
ザクザクと砂浜を歩く
少し進んだ先で腰を下ろした
砂に手をつくと砂以外のものに触れた
シーグラスだ
私の手が触れていたのは水色
その向こうには緑色のシーグラス
更に向こうに茶色のシーグラス
よく見ると彼方此方にシーグラスが見える
1つ2つ拾う
3つ4つ拾う
気付けばすっかり夢中になってしまっていた
空が白んでいる
両手いっぱいのシーグラスを波打ち際で濯ぐ
濡れたシーグラスを1つ目の前にかざす
それと同時に日が昇り始めた
シーグラスが太陽の光を浴びてキラキラと輝く
ああキレイだ
気に入ったものをいくつかポケットに入れる
良く解らないが満足だった
心が満たされたような気がした
またザクザクと砂浜を歩く
砂を払って靴を履き階段を上がる
またこの海に来よう
輝く海を見ながらそう思った


―――海と私


                     #51【海へ】

8/23/2023, 2:26:54 PM