ななしろ

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「バカみたい」

 気が付いたら唇から本音が溢れていた。顔も知らない友達から送られてくる日記みたいな長文メッセージとか、狭い世界で相手の顔色を伺いながら交流してるSNSとか。嫌われたくない一心で我慢してきたけれど、もう、こんなものに時間を奪われること自体が嫌になってしまった。アンタの日常に興味ないし、嫌われたところで明日死ぬわけじゃないし。他人に気を遣って好きなことも言えなくなるなんて、意味がわからない。
 スマートフォンの画面をひと睨みして、躊躇いが生まれる前に指を動かす。当たり障りないスタンプや感想を返していたあの子には懇切丁寧なお別れのメッセージの後にブロック、趣味のために作ったのにマウントと陰口ばかりがタイムラインに流れるSNSアカウントは削除。その他もろもろ、あたしを縛るあれこれの整理。嫌いたければ嫌えばいい、何を言われようがあたしの知ったことではない。何故ならぜんぶ見えなくなるから!
 一通りの操作を終える頃には、怒りに近い感情はすっかり鎮まっていた。むしろ清々しさすら感じている。スマートフォンを置き、ぐっと背伸びをすると共に胸に満ちた達成感。なんだ、こんな簡単なことなら早くやればよかったんだ。

「ほんと、今までのあたしってバッカみたい!」

3/23/2023, 2:53:09 AM