みんみんどり

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高校か中学生ぐらいです
そろそろだと思ったので。


───

日付が変わるまで、あと20分ちょっと。
私は明日が心配でたまらない。

───

今日は2月13日。
校内の女の子たちが色めき立つ時期に、私は憂鬱な気分に浸っていた。

毎年、私の彼氏はありえないほどバレンタインチョコを貰うからだ。

なにあれ?机の周り、下駄箱の中、ロッカーの中…360°見回してもあるチョコの嵐?こんなの知らないって。

年々増している可愛い箱たちは、今年私たちが3年生であることもあり最高記録を更新するのではと予想している。

彼氏が休み時間にも告白の受け答えをしている場面を見て、耐えられる彼女はこの世にいるのか?いるならインスタ交換してほしい限りだよ。彼女の鏡め。

今年もいい彼女として彼の隣に立つために、我慢だ。

───

そして冒頭に戻る。
無理やり目を閉じて、意識がとぶのを待ち続けた。

───

ぜんっぜん寝れなかった。最悪だ、こんな日に。
寝坊した私は、急いで家を飛び出した。

───

「───ありがとう」

今日1日の中での最悪イベントが目の前で発生しやがった。
学年1美少女が私の彼氏に告白だって??
こんなとこで「いや私の彼氏になにしてんすか〜笑」とか言えるわけないだろうよ。
しかもなに?彼氏、ありがとうとか言ってたよね?

そうこう考えてるうちに、話が終わったようだ。
安心して、隠れていた壁にもたれかかるように座り込む。

───ん?

女の子が目を擦りながら走っていった。
今、泣いてたよね??やばくない??え??

ちょっと待って、と立ち上がろうとした時、


「何してるの、そんなとこで」
「へ?」

そこには手ぶらの彼氏が壁に手をかける体勢で私を見下ろしていた。

「いや、何って、あの子泣いてたからっ、」

だめだ、しゃべろうとすると嗚咽が邪魔をする。

「あれ、ひどいクマだね。夜、寝られなかったの?」
「っ、う、ん。でもっ、そん、なじゃ、なくっ、て」

口を動かせば動かすほど、枷を切ったように涙がぼろぼろ零れてくる。
うっすらと、授業開始のチャイムが聞こえた気がした。

「───俺はちゃんとできてるのかな」

ふと、しゃがんだ彼がぼそっと呟く。

「何、が?」
「彼氏」

何を言い出すんだ、この人は。私にはとっても足らない、唯一無二の彼氏だと言うのに。

「そんなことっ、ないっ、」
「こんなに彼女を泣かせているのに?」

こんなに可愛い女の子を大事にできてないんだよ?

じっと見つめる瞳。
そんな言葉に、私は何も言い返せない。

「私にとって、は、十分、彼氏、だと思う」

ズビ、と鼻をすすりながら伝えた。
すると、グン、と腕を引かれ、気づいたら優しい温もりの中にいた。

「ありがとう。そう言って貰えるなんて嬉しいな」

力を込めて抱きしめてくれている彼は、私の首元に顔を埋めながらそう言ってくれた。

「ちなみに、なんでそんなに泣いてるのか、聞くのっていいやつ?それ」
「…別に、いいけど、そんな話せないと思う」

落ち着いてきた私に優しく彼が問いかける。

かくかくしかじか。

話し終えた私は彼を見ると、少し笑いを堪えたように見えた。

「…何笑ってんの」
「いや、さすが俺の彼女だなって」
「何それ」

ふっと笑うと、安心したように彼は私を見つめた。
私はこの真っ直ぐな瞳に惚れたのかもしれない。

「君は俺がどう答えるのかって心配だったんだろうけど、俺だって心配なんだよ?」
「え、何で?」
「君は気づいてないかもしれないけどね?俺だって君を守るのに必死なんだから」

これ以上聞くのはなんだか気が引けたので、ふーん、とだけ言って返した。

「ちなみにね」
「?うん」
「今年の俺と去年の俺でどこが違うでしょうか?」
「…え…?」

制服は、変わってない。髪型?朝ごはん?なんだろ。

「さすがに朝ごはんは違うかもね。でもどれも違うよ?」
「わかんないわ、ごめん」
「悲しいな」

正解は、俺の身の回り。

それだけ言って、やっと気づいた。

「チョコ無いじゃん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「あ、やっと気づいた?」

今年は誰からも受け取らない、と彼は周りに言っていた、らしい。私は知らなかったけど。

「告白は仕方なかったけどね、もちろん断ってるよ」
「これでOKしてたらぶん殴るよ?」
「やめてください。」

時計を見ると、授業の半分が過ぎていた。
こりゃもうだめだな。サボろう。

あ、と思いついたように彼が話す。

「俺のこと心配してくれるのは嬉しいけど、寝れなかったら連絡ぐらいは欲しいな」
「んー…夜は遅くなるのもあれだし…」
「じゃあメールだけでもいいからしてね」
「メール?なんで?」
「朝は玄関開けた瞬間から居たら心配なんて無くなるでしょ」
「それは怖いかも」

いい案だと思ったんだけどな、と笑みを零しながら言う。横顔もイケメンすぎる。溺愛。

「君がいい1日を過ごせるように、最善を尽くすよ」
「ん、ありがとう。」


こんなことを言ってくれる彼氏がいる私に、明日の不安なんてないのかもしれない。


───おまけ───

「俺にチョコは無いの?」
「あ、忘れてきちゃった」
「ひどくない?俺これでも彼氏だよ?」
「ごめんて、明日でもいい?」
「明日でも食べれるならいいよ」
「いける、普通にチョコだから」
「ありがとう。ホワイトデー楽しみにしててね」
「やった、水族館デートとか行きたい」
「それだけでいいの?」
「え」



20250120 【明日に向かって歩く、でも】

1/20/2025, 12:47:39 PM