めぐり逢い
「今日暑くね!」
今日何度目かわからない言葉を吐き出した。
「ほんとそれ…春なのに暑すぎだよな!」
「じゃあさ、あそこの山に肝試し行かね?」
暑さにうんざりしていた僕らがその提案に乗ったのは言わずもがなだ。
あたりがすっかり暗くなった深夜23時。まだ冬の気配がする夜風が少し肌寒かった。
そして、僕ら3人はピカピカの新車に乗り込んだ。ハンドルを僕はギュッと握り、勢いよくアクセルを踏んだ。僕たちの通う大学から15分程度走った所で山に到着した。
名前もわからないただの山だ。だけど、夜誰もいない静けさに支配された山は十分怖かった。
僕ら3人は若さゆえの無鉄砲さを発揮して意気揚々と山に入っていった。
軽く舗装された山道を懐中電灯で照らしながら、しばらく登った。そうすると少しひらけたところに出た。辺りを照らすと一枚の看板が立っていた。
「自然のめぐり逢いに感謝して登ってください。」
少し、不気味に思った。
僕らは歩みを進めて15分後、山頂らしき場所に出た。
少し上がった息を整えるために3人でそこにあったベンチに腰掛けた。
「なあなあ、これなんだと思う?」
一人が嬉しそうにバックから何かを取り出した。そしてピトッと僕の手に近づけた。冷たい。
『酒だー!!』
3人で缶を開けて乾杯をした。ツマミも開けて呑めるようになった酒を楽しんだ。
完全に気が大きくなっていた。
「持ち帰るのだりぃしここに捨てちゃおうぜ」
一人がそう言って、斜面の方向へ投げ捨てた。数秒経ってアルミ缶が木にぶつかる音がした。
「結構、飛んだんじゃねw」
もう一人も、僕も同じようにして缶を投げた。どこまで飛んだかなと手に持っていた懐中電灯で木々の中を照らす。ふと、変なものが見えた。木々の中に黒いナニかがいる。それに気づいたら、木々が枝を打つ音に混じって唸り声がすることも気づいた。枝がナニカが通ってパキパキと音が鳴っている。その音は一つどころではなかった。さっと血の気が引く。微かな光でナニカを照らして目を凝らす。
懐中電灯が手から滑り落ちた。
「野犬だ…」
それを合図に犬の足音が早くなって、吠え声が聞こえ始める。変な汗が出た。酔いもすっかり覚めた。
ただ足を動かしてもときた道を駆け降りる。必死に走っても状況は変わらずどんどん悪化してくる。一人が暗闇の悪路に引っかかって転けたのか、悲鳴が聞こえる。
「大丈夫か!」
声をかける。ふと嫌な予感がした。懐中電灯で後ろを照らす。鋭い犬歯をこちらに向けて野犬が飛び上がっていた。
[あぁ、これがめぐり逢い…]
4/25/2025, 9:47:20 AM