青羅紗

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「あけましておめでとうございます!」
テレビの司会者が言う。
私は膝を抱え、足や手のひらに汗をかき、零れそうになる涙を堪えている。
私の人生がまた一年進んだ。
良いお年を、なんて言うけれど
私にとって新しい一年というものは大変な地獄なのである。
真っ赤になって汗をかきながら、何を考えるでもなくジッとテレビを見つめる。
一時間ほどそれを続ける。
私の嫌いなアーティストが音を外し、けれどとても楽しそうに歌っている。
私はそんなふうな事を考えてしまう、嫌な人間なのだ。
心の奥底が冷たくなるような心地がした。
去年の今頃は、友人と楽しく過ごしていたのに。
私は捨てられたのだろうか。
いや、そもそも拾ってもらってすらいないのではないか。
私がこのような人間でなければ
彼女は大晦日も、家族と過ごす筈の元日ですら私に時間をくれたのでは無いだろうか。
楽しかった時間は元に戻らないという。
だから私は無理やりにでも笑顔を作って言うのだ。



「良いお年を」

12/31/2024, 4:09:24 PM