いす

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見つめられるとその視線の強さに押し出されるようにして涙がこぼれる。そのままその大きな瞳もこぼれてしまえばよいのですとお前は言う。盲いてしまえば、その目が最後に見たものは俺ということになるので、などとほざく。いつか私があのトカレフで撃ち抜いたお前は、結局は私の前にまた現れて、なんやかやと理由をつけて近くに居座っている。つまり前世のお前が最期に見たものは私であり、「なので執着が消えぬのです」「復讐にきたのです」「あなたも同じ目に遭っていただきたく」などと続けて垂れる。目を奪われては同じ目に遭いようもない、と言った私の口答えは無視される。
お前は知らない。
あの日引き金を引いた私はお前の血潮に目が眩み、そのまま目を閉じ、お前のために痛んだ肩をあげ、己のこめかみに銃口を当てたことを。いつかの私が最期に目にしたものはお前である。私はそのことをお前に教えない。お前がこのこぼれる涙をぬぐってしまうから。復讐は繰り返される。そうして私たちは永遠に互いを慈しみあう。

3/28/2024, 4:21:31 PM