ーーズキン。こめかみが脈を打った。
激しいとまではいかないよく慣れたそれだ。片頭痛持ちの私からしたら、よくあるなんて事ない痛みであった。
さて、薬を飲んだら冷えペタを貼って横になろう。携帯はいじらずに目を瞑って一眠りしたらあっという間に居なくなるだろう。
そう思っていたのに、どんどん早くなる脈のリズムに自分の体が持っていかれそうになった。
遠くから頭痛が声を出す。少しずつ少しずつでも確実に、着実に。私の元へやってきている。遠い足音は気が付けば地響きすら感じられるようになって、もう勝ち目がない。
あぁもうダメだと思った時、柔らかい手の温もりが私の頭に降ってきた。撫でられたと気付いたのは撫でられた後。ふわふわとした感覚が頭痛を追い払う。その手の体温が、私は好きだった。
/遠い足音
10/2/2025, 9:07:24 PM