黒神

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街の明かりは白く燃え
今日僕は空へと飛び立つ


この国では誰もが翼を持ち自由に空を飛ぶ事が出来る
この広い国で僕はただ1人翼を持たぬ忌み子
奇異の目で見られ蔑まれ暴力や暴言を浴びせられる毎日
もううんざりだった

そんなある日国中が大騒ぎする事件が起こった
見付かったのだ
翼を持たぬ少女が

僕はその少女の事が気になりつつも
どこにいるかも分からず
ただ『いつも通り』の毎日を過ごすしか無かった
会った事も無い少女に思いを馳せ
傷ついた心を慰め合う想像をする
きっと彼女も辛い思いをしている
そう思っていた
ある日行く宛もなく歩いていた僕の前に
彼女は現れた
その背中には翼が無かった
僕は思わず声をかけた
「あ、あの……」
彼女は僕を睨んだ
まるで汚いものでも見るかのように
「忌み子の癖に話し掛けないでくれる?」
僕はただ口をだらしなく開けて立っている事しか出来なかった
「私の翼は翼が生えてこなかった男の子にあげたのよ」
彼女は誇らしげに言った
「背中の傷は私の勲章」
彼女のせいで仲間を失った怒りと
僕のような日々を送る子供を減らせた喜び
2つの感情が複雑に絡み合い胸が苦しくなった

僕は夜の街を見下ろし溜息を吐いた
結局僕は独りだった
天国と呼ばれるこの国は薄汚く
天使と呼ばれる我らは崇高な存在ではなかった
うんざりだ
足下の遥か下
雲の間から星のように見える街の明かりを見詰め僕は手を広げた
何だか飛べそうな気がした
僕は足を大きく前へ1歩踏み出した
下界の街の明かりと溶け、混ざり合っていく僕
もう何も怖くない

Title¦街の明かり

7/8/2022, 2:50:15 PM