金平糖

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『夜景』

見下ろした夜の街で数万人が生を全うしている。
山を下れば、途端に自分もその一員になるというのが不思議で堪らない。
白い息の行方を目で追うと、燦然と輝く無数の星が夜空に散らばっていた。そのうちの一つを摘んで口へ運ぶ。そんなふりをする。

さらに山を登れば、さらに街は縮こまる。
星は大粒になったかと見上げたが、変わっていなかった。
いつかもっと高い山に登ろうと思った。
頬張る星が飴玉くらいの大きさになるまで、登ろうと思った。
そうして街が見えなくなった頃、世界に忘れられたい、と思った。

その日が来るまでは、この夜景の一部として生きよう。
最後、見下ろす世界が美しいものであるよう、努力をしよう。
そう心に誓い、私は山を下った。

9/18/2024, 2:39:22 PM