どうすればいいの?
あの子のことが好きだった
風に揺れる美しいブロンドが
陽の光を受けてキラキラと輝く美しい宝石が
シャスターデージーの花畑に佇む小さな影が
何より眩しくて暖かいその笑顔が
私の宝物だった。
「アリーが?」
これは今年一のビッグニュースだ。階段を駆け上がりベッドに潜る。嬉しい。また帰ってきてくれるなんて。
ベッドの横にある棚から2枚の写真とおもちゃの指輪を取り出して眺める。どっちの写真にも2人の少女が笑っている。右がアリーで左が私。昔はこれが定位置だった。
移動サーカスに所属するアリーのお父さん。その移動と一緒にアリーも沢山の場所を旅してきたと教えてくれた。その場所に留まるのは数ヶ月だけで終わったらまた別の場所に行く。
私とアリーが遊んだのも数ヶ月の短い時間だったけどまた会おうねって約束した。
私はアリーが大好きだ。
きっと、アリーも
翌日。広場に出ると移動サーカスの話で持ち切りだった。
やっとアリーに会えると思うと足取りが軽くなる。花歌を歌いながら買い物をしているとパン屋のハル姉に楽しそうねと笑われた。
今日は花も買っていく。サーカスは明日だけど今日の夜にはきっと来ていて準備をする。その時にアリーに渡すのだ。
「程々にね」
ママの言葉にうんとだけ返して広場に向かって走る。予想通り今日中に設置されたテントに向かって一直線だ。アリーがどこにいるかは分からないけどとりあえず裏に回って演者のテントに向かう。なんだか緊張してしまったので一声かける前に深呼吸。
あ、髪は乱れてないかな。服これで良かったかな…
「よしっ」
行こうと決意を決めて足を踏み出す。
「これで大丈夫?」
「うん、完璧だよ」
と、話し声が聞こえてきたからそっと中を除くことに留まる。中には2人だけ。背が高い青年と…アリーだ。
衣装の準備かなと思いアリーだけになるまで少し待つ。
「似合ってる。明日から頑張ってね。」
「ありがとう。」
かなり親しげな様子で少し羨ましい。
距離があんまり近いんじゃない…?
2人とも幸せそうな顔。
あ、指輪…お揃いだ。
青年の手がアリーの頬に触れる。2人の顔が近づいて…
「…ぁ」
気づいたら走り出していた。
せっかく整えた髪がぐしゃぐしゃに崩れる。
本当はお洒落して選んできた服が木に引っかかって破ける。
アリーに渡したくて持ってきた花束も置いてきてしまった。
息は乱れたし、涙も止まらない。
それでも走った。
走って、
走って、
逃げた。
足が限界を訴えて、その場に座り込む。
さっき見た光景が頭から離れない。
胸に波のような悲しみが押し寄せる。
本当は分かってた
頬に涙が伝って
私じゃ似合わないってこと。
いくら擦っても止まらない。
10年間ずっと想ってた。
声が枯れても
アリーに伝えたかった。
後ろに倒れると憎らしいほど綺麗な星が輝いてる。
視界が原型を留めないほどに歪んで、私の心情みたいだ。
「ねぇ…?アリー。」
もう一生届けられなくなった言葉。
私の中にしまい込まないといけなくなった気持ち。
ずっと大切にしてきたこの想いを。
「どうすればいいの?」
11/21/2024, 11:57:44 AM