オカルト
300字小説
人寂し
秋もふけてくると、限界集落にある俺の家には、山の物の怪が降りてくる。奴らも秋の夜長はもの寂しいのだろうか。窓の灯りの届くぎりぎりで佇むモノ。裏の戸に団栗をぶつけて遊ぶモノ。そして。
「今日はお前か」
囲炉裏の明かりに俺の影がゆうらゆうらと揺れている。
「一人では多いからな、半分食うか?」
灰に埋めておいた芋を取り出し、割って影の中に置いてやる。
「今日は畑の大根の土寄せをしてな……」
ぽつりぽつり、欠けて消えていく芋に話しかける。
山里に一人暮らし。俺もやはり夜は人寂しいのか。
小さく苦笑して、鉄瓶のお湯で湯のみ二つに茶を入れる。
ぽちゃん。差し出した茶の液面が『それで?』と話の続きを促すかのように揺れた。
お題「秋🍁」
9/26/2023, 11:26:58 AM