阿呆鳥

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【二人だけの。】

──ここは二人だけの秘密ね!

 幼い頃の約束は、どうしてこんなにも儚く忘れ去られるのだろうか。二人だけの秘密、と約束した場所は、気づいたら、私を除いた二人の秘密基地となっていた。

 高校に入学してすぐ、別の学校に通う幼なじみと遊ぶ約束をした。スキップ気味で待ち合わせ時間の数分前に約束の場所へ行けば、そこには知らない人がいた。荷物を片手にスマホをいじり、こちらに気づくと怪訝な顔をした。

「え、誰……?」
「そっちこそ、どちら様ですか……?」

 お互いに状況が把握できず、問いかけに答える訳でもなく、じっと固まっていた。数分が経った頃、幼なじみがやってきて「え、はやーい!」と笑った。
 しかし、大好きなはずの彼女の笑顔がどうでもいいと思ってしまうほどに、今の私は困惑していた。

「ど、どういうこと?」
「高校で出来た新しい友達! 三人で仲良くしよ!」

 三人で仲良くすること自体は嫌じゃない。友人の少ない私にとって、関わる人が増えるのは嬉しいことだった。だが、“この場所”を勝手に共有されたことが嫌だった。
 二人だけの秘密と約束したはずじゃないか。

「あ、なに? いつも話してた幼なじみさん!? はじめまして〜!」
「え、あ、どうも……」

 「いつも話してた」? 高校生になり、部活や委員会で忙しいからと、なかなか話せていなかった私に対する当てつけか? 私たちは仲がいいからいつでも話せるし、お互いに時間を割けるんですよ、という自慢か?
 何かそのあともペラペラ喋っていたが、全てが私に対する自慢や当てつけに感じて、聞き流すことしか出来なかった。

「てか、なんか気分低い?」
「なんでぇ!? いつもテンション高いじゃん!」

 頭の中に浮かぶ文字はただ一つ「合わない」だった。
 そして、今までの幼なじみの変化に納得がいった。長いはずのスカートをギリギリまで短くし、ストレートだった髪にパーマをかけ、結べば分からないようなインナーカラーをいれて……。
 全て、この友人と出会ってしまったからか。私といた時の彼女はもっと大人しく、清楚という言葉がピッタリの儚い少女だったのに。

「あはは……」

 乾いた笑いで誤魔化し、私を置き去りにして盛り上がるふたりを呆然と眺めていた。場違いで仕方なく、早くこの場を去りたかった。その証拠に、体は段々と出口の方に後ずさっていた。
 しかし、幼なじみの言葉に思わず足を止める。

「いつもみたいに、ここでおにごっこしよ!」

 「いつもみたいに」
 まるで、ここに来るのが初めてじゃないかのような発言だ。話を振られている友人の方は、大した反応も見せずに「運動は嫌だ」と否定した。


チマチマ書きます

7/16/2025, 2:48:00 AM