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【日の出】

 シャッ、とカーテンを素早く引く音が聞こえた。沈み込んでいた意識がゆっくりと引き上げられる。何度か瞬きを繰り返す。薄暗い室内。音の方向に顔を向けて目を凝らせば、掃き出し窓の前に立ち尽くす人影が見えた。衣擦れの音で気が付いたのだろうか。何か声をかけるよりも先に、窓の外を見つめていたらしい視線がくるりとこちらに向けられる。

「あ、起こしちゃったか。ごめん」
「いいよ別に。なに見てたの」

 甘やかな声色に浮つきかける気持ちを抑えながら、ほんの少しそっけない態度で問いかけた。それに気が付いてか気が付かずか、彼はその質問には答えないまま、もう一度窓の方へ顔を向ける。

「ほら、ちょうど今見える」

 その言葉に、横たえたままだった体を少しだけ持ち上げる。一緒になって目を向けた先、遠くの山の間からきらきらと輝く太陽が覗いているのが見えた。――日の出だ。
彼がこんな時間から起き出してまで見たかったのは、この景色だったのか。隣をちらりと見やれば、満足げな微笑みを返される。差し込み始めた陽光に照らされたその笑みがなんだかひどく眩しくて、思わず目を細めた。

1/3/2026, 6:16:07 PM