「なんでなんでなんで!」
俺の胸を小さな拳でポカポカと叩きながら、子供のように君が怒る。
「だから。急な仕事が入ったんだって。しょうがないだろ」
1週間後、君と1日過ごす約束をしていた。でも、俺の仕事でだめになってしまった。約束を守れなくなったことは悪いと思ってる。でも、俺だって、好きでそうなったわけじゃない。
「だって、だって、その日は……」
君は拳を下げてうつむく。
「俺の誕生日だろ。わかってる。別にその日じゃなくたって、俺は君が祝ってくれるならちゃんと嬉しいよ」
そう、約束の日は、俺の誕生日だった。君が、どう祝おうかと最近ずっと頭を悩ませ、ワクワクソワソワと楽しみにしていたのは知ってる。俺はずっと、その気持ちが嬉しかった。
「……そういうことじゃないじゃん。バカ。」
拗ねた声で、君が小さく言った。
「うん、ごめん」
俺も小さく返して、君の小さな頭を優しく撫でた。君は俺にされるがまま、黙ってしばらく撫でられていた。
「……こどもっぽいかもしれないけど。わたしが、あなたの大切な日をひとりじめしたかったの」
しばらく経って、顔を上げ、俺を見上げて、君は言った。
いつもより少し、眉が下がっている。
可愛いなあ。俺の頬が自然と緩んだ。
「笑わないでよ、もう!」
君は、自分の言葉を笑われたと思ったのか、プンプンと唇を尖らせた。
それもまた可愛い。
「笑ってないよ」
そう言いながら、尖った唇に優しくキスを落とす。
不意をつかれた君は、目を見開いて、ポッと頬を赤く染めた。
10/13/2024, 11:54:19 AM