【時を止めて】
「なあ、もし時間止めれたら、何やる?」
コンビニの駐車場。
夜の冷たい空気の中で、あいつが缶コーヒーをプシュッと開けた。
「俺? 寝るわ、永遠に。」
「はぁ? 夢なさすぎやろ、お前。」
笑いながら、白い息がふわりと上にのぼっていく。
少しの沈黙の中で、遠くの車の音が消える。
缶の中から立つ湯気が、風に揺れた。
「俺は時間止めたら、お前だけ起こす。」
「は?なんでや。」
「いや、お前おらんかったらしょうもないやん。」
冗談っぽいのに妙に本気みたいで、返す言葉が出なかった。
時計の秒針が、やけに大きく聞こえる。
「じゃあ、俺も止めるわ。」
「なにを?」
「今。」
空を見上げると、雲の切れ間に星がきらりと光っていた。
あいつが肩をすくめて、缶を軽く持ち上げる。
「止めるんやったら、俺も動かしといてくれや。」
カラン、と缶がぶつかる音。
その音が夜に溶けて、時間がゆっくり止まった気がした。
ぬるくなったコーヒーも、街灯の明かりも、笑い声も──全部そのままで。
11/5/2025, 11:30:15 AM