名無しの夜

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むかーし、むかし。

年末だったから、何とはなしにお参りに行った。
祈った願いは多分、二人とも同じことだったんじゃないかな。


『いつまでも、ずっと一緒に』


帰り道、
通りの屋台でお団子を買って食べたね。

風が冷たくて、かじかんだ手を握ってくれたっけ。

大きな手は温かくて、心もほどけた。

少し先を歩く老夫婦も、支え合うように手を握っていて、それが何だか嬉しかった。

自分たちの未来だと、そう思ったの。



いつからだっけ。
震えていても、手を握ってくれなくなったのは。


手だけ暑くなってもね、とか
手汗が嫌だ、とか
そんなことを言ってしまったこともあったような気がする。


嫌だよ、恥ずかしい。
そう言われたのは、私の失言の後だったか先だったか。


もう、思い出せない。
思い返しても、何の感情も沸かないの。



でもね。
昔は、確かに望んでいたんだよ。


『いつまでも一緒に、手を繋いで』



あの老夫婦のおぼろげなお姿は、瞼の裏の幻影。

永遠に消えない、憧れの幻。

12/10/2023, 5:48:05 AM