普通の人間だった頃は欲しいものがいっぱいあった。
富、声明、権力。ありとあらゆるものが欲しかった。そして、何も手に入らなかった。
結局のところ、ボクは『ボク』という一人称を使っているという理由だけで周りから異端だと思われて、女の子なのに男の子になりたいのか、なんて言われて、『ボク』という人間自身を蔑まれた。
この世界に来た最初の頃は欲しい物は信頼の一つだった。
とにかく二度と蔑まれたくなくて、富とか永遠の命とか欲しかったそういうものが全てどうでもよくなった世界だったから、権力者の集団に気に入られようとした。
今はどうだろう。
何が欲しいんだろう。
ボクは、今。
⋯⋯⋯⋯欲しい物、ではなく望みならある。
彼に振り向いてほしいし、彼と対等な者になりたい。
洗脳しないでみんなが幸せに望んでこの世界に住めるようにしたい。
でも、欲しい『物』と聞かれるなら。
欲しい物なんて、ない。
何も、いらない。
4/20/2024, 3:26:46 PM