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 あいつだけはない、と思っていた。ずっとずっと、昔から。病院までも同じだった、母親同士が親友である幼馴染のバカとなんて。

「随分とまあお似合いカップルじゃない?幼馴染くんと」
「カップルて……そんな気はないよ、互いにね」

―――事実、直前になるまでしてたのはこんな会話。後ろからも、あいつとその友人が、私とあいつはありえないという話をしていた。
 その理由は簡単だ。

「だって好きじゃないもん、あいつのこと」

好きじゃない―――タイプじゃないのだ、お互いに。もちろん、幼馴染としては好きだ。いいところもたくさんあるし、あいつに対してそういう相談をクラスメイトから受けたとき、なかなか見る目がいいと称賛してしまうくらいには。だがそれは決して、決して幼馴染としての感情で、恋人になるような感情ではない。

「はあ、あんだけイケメンがいるのにタイプじゃないねぇ。ま、幼馴染くんもそう言ってるとこ見るけどさ」
「でしょ?互いに無理なんだよ。そもそもほぼ家族みたいなもんなんだから、恋愛的に見るのはなかなか難しいって」

 このとき、できないではなく難しいと言ったことが未来の運命をわけたのかもしれない。遠い遠い、それこそ今から大体十年後の社会人となったときのことではあるけど……。

*****

「……随分とまあ仲悪くなったじゃない?幼馴染くんと」
「仲悪いて……まあ、そうなのかもね」

 十年後の同窓会。お似合いカップルだと互いに友人にもてはやされていた私達は、今現在そんなことを言われることはなくなった。疎遠になった、ということだ。私達は高校を出てからも母親関係で関わると思っていた……それが、仇となった。私の母親が病にかかり、そんなことできるような状況ではなくなったのだ。私は母親の看病に時間も金も費やすようになり、父親は母親を生かすために今までより必死こいて働くようになった。その努力が実を結んで母親の病は治ったけど―――そのときにはもう、大学生を軽く超え幼馴染と関わることはなくなった。

「……」
「でもその疎遠はどうやら、今更恋心を人に抱かせたらしいわね」
「うるさいよ」

 好きじゃないのに。あいつの性格が変わったとは思えない、恋愛的には一番好きじゃないはずなのに……遠い席で酒を飲んでる笑顔をあいつを見ると、それこそまるで一目惚れしたようにどくんと心臓が鳴った。否、鳴ってしまった。
 なんでこうなったのかはわからない。だけど確かに、十年一切関わらなかった人なんて家族だという認識が薄れたのかもしれない。蘇ってくるのは前の思い出と同時に、とある言葉だ。

「だって好きじゃないから、あいつのこと……か」

それも十年前のことだが、私が友人と喋っていたときに後ろでそう言ってたのだ。もちろん幼馴染として好きだけど、恋愛的には好きじゃないから、と。

「―――さいっっっあく」

 あいつは私を好きになることはない。だって一番、恋愛的に好きじゃないから。でも私は、なんでか―――恋愛的に好きじゃないのに、好きになってしまった。

「絶対報われない恋だなんて、したくなかった」

 好きじゃないのに、好きになるなんて。

3/25/2026, 10:58:03 AM