古井戸の底

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親友と日付が変わる直前まで電話し、7日と14日のことを相談した。
自分から7日を取り付けたのなら、藤堂にキャンセルの連絡はした方が良い。それで返信が特に来なければ終われる。筋を通したい彼女らしいアドバイスだ。
14日には八木橋との2回目が待っている。藤堂の時のように、相手の言動が理解できずに不快にさせてしまったら…?いや、伝えたら重いとか面倒に思われるのでは…?
彩子は、自身の特性について事前に伝えるべきかも悩んでいた。

「言ってていいんじゃない?あと、今はあなたとだけやり取りしてるってことも、さりげなくなら」
八木橋は誠実で保守的だ。自分がまたやらかしても、その理由が分かっていればゆっくり話してくれるかもしれないし、そんな気遣いをしなければならない相手とは関わりたくないと思われるかもしれない。
次は彼からも多少は話を振ってくれるだろうか。彼の恋愛観についてもう少しだけ踏み込めるだろうか。
彼はどうして、私とまた会いたいと思ってくれたのだろうか。

『納品した物に不具合が見つかってめっちゃ残業しちゃいました…今帰ってきました』

八木橋から遅めの返信が 来ていた。彩子が振っていた話題への返答に、返信が遅れた理由を自ら添えていた。
私なんかのために、無理しなくても良いのに。彼の律儀さを、彩子は愛おしいと思った。心臓は穏やかに動いている。


【心の深呼吸】彩子12

11/28/2025, 2:00:04 AM