まるくに

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服の端から出ていた赤い糸を引っ張ってみた。スルスルと続いて出てくる出てくる。ピンと張った糸の先に、いつのまにか親しい執事の指があった。彼は頬を染めながら、こちらを愛おしそうに見つめている。
目が覚めて夢だったのだと気づいた。
おはようございます。左側から声がしてそちらを見れば、思っていたより近い距離に執事の顔があってびっくりした。すみません。と執事は顔を引く。部屋を見回せばやりっぱなしの刺繍道具が放置されていた。どうやら刺繍をしていたところ、うとうと寝てしまい、それを執事がベッドに運んでくれたようだった。
お礼を言って体を起こす。右手を布団についたらチクリと痛みがした。みてみると、ついてきてしまったのか、刺繍の針が薬指の先に刺さっていた。執事は慌てて止血をしてくれた。そんなに血も出てないけど、温かい気持ちになった。止血するために触った血が、彼の指につく。先ほど見た赤い糸のようだった。
あれはいい夢だった。どんな夢だったっけ。忘れちゃったけどいい夢だった。
彼が手の処置をしてくれている間だけ、夢について考えていた

6/30/2023, 12:56:28 PM