ロマンス詐欺に遭い、人間不信になった。
詐欺にあっただなんて、きっと親はがっかりする。唯一相談できるのが、マリアだった。マリアはあだ名で、ちょっとしたコミュニティのリーダーだった。
マリアの言葉や占いは人を動かし、魅了した。彼女はカリスマというやつなんだろう。
マリアの占い通りに名前を変え、彼女の勧める化粧品や日用品、飲料まで何もかも買った。自分に自信が湧いてくるようだった。マリアは私を否定しない。
見捨てられたら私は、自分がどうなってしまうかわからないから。何も疑わなかった。
今私の立っている場所が廃屋の屋上でも。
でも。でも、マリア、
私はもう一度マリアを見た。
「なぜ私は飛ぶの?」
「ここで試されてるのは私の力を信じるか、信じないかなのよ」
その声色は私を責めていない。頭を撫でる母親のような柔らかさ。
「私の力があるからあなたは怪我もせず着地できる」
私は風に身を任せた。
5/14/2024, 1:49:13 PM