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尿意を催して目が覚めた。

 夢かうつつか意識は曖昧で、少しの高揚感があったのだが、身体ははっきりと体外に尿を排出せよと命じており、ふたつの感情がせめぎ合っていた。
 布団と私の癒着は激しかったが、最終的に生理現象に負けて布団を剥がすことになった。
両足をベッドに下ろすと、足元にひやりと床の冷たさが伝わる。
 気休めにスリッパを履いて、部屋のドアを開けると、隙間からキャミソールの胸元にするりと風が入り込んで鳥肌が立った。
 室内は冷気が冴えわたり、照明のスイッチを探す私を焦らせた。

家のトイレは寒いのだ。
 私は下着を下ろすと、ダメージを最小限におさえようと、そーっと腰をおろすのだが、案の定無駄だった。
ヒャッとする。
便座は私から貴重な体温を奪い、両腕の肌を七面鳥に変えた。
 抑制していた筋肉が弛緩され、そこからも温かさが出ていった。湯気が立つのを恐れて、私は股を閉じる。用を足して安心したのも束の間、次の難関が待っていた。

 洗面台の前に立つ。お湯をひねろうか水をひねろうか迷った挙げ句、水からお湯に変わる待ち時間を憂い、水の蛇口をひねった。出てきた水に指先だけ当てて温度を確認してみたが、どうあがいても温かいはずはなく、決断を迫られる時が来た。

 ―うん、二度寝は無理だな。

 私は蛇口をひねって水を強くした。 
 
  
 
 
 

1/11/2026, 3:19:49 PM