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▶92.「旅の途中」
以下、更新しました。
▶91.「まだ知らない君」
▶90.「日陰」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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「入国目的は?」
「色々見て回りたい。観光だ」
「イレフスト国は初めてか?サボウム国の前はどこにいた?」
「ああ、初めてだ。前はフランタ国にいた」
「収入源は何だ」
「手紙の配達と、薬草採取をしている」

ここは、サボウム国とイレフスト国の国境地帯。
人形は入国審査を受けているのだが、質問は細かく、じろじろ見られている。
ナナホシは荷物の中に隠れている。

「典型的すぎるほど典型的な旅人だな。ようこそ、イレフスト国へ」

ぞろぞろと道行く人間たちについて行けば、最初の街が見えてきた。

イレフスト国には、今までの2国、特にサボウム国とは対称的な、
戦乱前の街並みが数多く残っている。
使われていない設備も多いものの、姿かたちはそのままに、国民と共存している。

「これがナナホシを創った人間の国か」
「機械、タクサン」
「稼働はしていないようだがな。音がしない」

国境警備は厳しかったが、街の出入りは制限がなかった。
広く開かれた街を歩いていく。

「まずは市場の果物屋だな」
「みかん、みかん」
「なぜ聞き取れないのだろうな」

名前が分からなくとも柑橘であることには間違いない。
『みかん』を探す旅の途中である人形たちは市場をくまなく探した。

「ないな…」
しばらく考えた人形は、ふと閃いた。
「日持ちしないか、季節違いかもしれない。保存食を見てみよう」

しかし、目的のものは見つからなかった。

「特定の地域にしかないものなのか?ナナホシ、何か情報はないか」
「ナイ」
「そうか…」

今はイレフスト国のほぼ南端にいるため、それほど寒さも厳しくはない。
だが、北上すればするほど人形たちにとって活動は困難になる。

流し歩いていると、洗濯屋が見えてきた。

「あの洗濯屋、店内に柑橘が置かれている」
「本当ダ。籠ニ山盛リ」
「聞いてみよう」

「ああ、これ?オリャンだよ。知らないの?」
「オリャンというのか。私は、今日はじめてイレフスト国に来たんだ。今まで見たことがなかった」
「ええー、これ他の国にないの?これねナトミ村で作られてるんだけど、石鹸と一緒に使うと汚れが落ちやすいんだよ。いい匂いもうつるし」
「食べたりは?」
「しないしない!すっごいすっぱいんだから!」
「そのナトミ村というのはどこに?」
「この国の南東に位置していて、ここからだとほぼ東にまっすぐ行ったところにある村だよ。村っていうか、もう街だけどね。オリャンの木がいっぱいあるからすぐ分かるんだ」
「そうか。教えてくれてありがとう」

チリンチリン、と鐘を鳴らして人形たちは店を出た。

「一気に近づいたな」
「ビックリ?」
「驚く…そうかもしれないな。今ならまだ出発してもおかしくない時間だ。ナトミ村に向かおう」


一方、同国の対フランタ技術局にて

「やれやれ、やっと明るくなったわい」
「この数日間でかなり夜目が鍛えられた気がします」

『瞳』が開いて数日。まだ軍の応援は来ないが、動力は必要分取り込めたらしい、勝手に明かりがついた。

「む、何かあるぞ」
壁から離れていたため気づけなかった小さな柱状の機械。
手型があり、『愛を注いで』と書かれている。

「とりあえず試してみるかの」
手を置いてみると、

『すでに受け取り済みです』
という音声が流れた。下でパカッと扉が開いたが、確かに中は空だ。

「なんじゃこれは」
「空ですね」

どっこいしょ、と覗き込んだ姿勢を戻した時、
前にある大型機器から光線が出てきた。

「うわっ!」
後ろで驚く部下の声がした。
光線はやがて、像を結び男の姿になった。

「はっはっはっ、再び愛を注いでくれてありがとう。まだ居たのかね。プレゼントは喜んでくれたかい?
もしかして説明をもう一度聞きたかったか?それは君が自分で試し探していくことだ。ここを本当に廃棄するつもりなら開始ボタンを長押しだ、忘れないように。君はまだ若く健康で、人生という名の旅の途中だ。幸多からんことを」

「なんじゃこれは」
呆気に取られたわしは、もう一度同じことを呟いた。


「課長〜!!無事ですか〜!?」
「恨むとか言ってすみませんでしたー!!」
遠く小さく、戻ってきた部下の声が聞こえた。

2/1/2025, 9:23:14 AM