NoName

Open App



私はこの村から出たことがない。というのも出ることを許されていないからだ。この村の神の巫女として、結界を守ることでこの国が守られるだとかどうとか。

もっとも、私はそのことを信じていない。何せ何一つ特別なことはしていない。祈りの時間があるわけでもなく、滝行をするでもなく。ただ村の人々と同じように起きて食事をして働いて、寝る。毎日毎日、毎日そのことの繰り返しだ。

私はこの村をでたい。大人に言っても反対するだけだから誰にも伝えたことはない。

村を飛び出す理由は色々とあるけれども、一番の理由は神社で掃き掃除をしていた時のことだ。水撒きをした後の葉についていた雫を眺めていたあの人に逢いたいからだ。

4/21/2026, 10:24:56 AM