純情人間

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フェリーの待合室に独り、船を待つ。

八月のベンチは暑さで湿り気を帯びており、

少し動いただけで感じる摩擦が気持ち悪い。

手元には、都会に住む友人からの手紙。

ある日突然ポストに入っていた。

字の汚さは相変わらずみたいだ。

本人はあまり気にしていないのだろう。

十年前の夏、あいつはこの島を去った。

こんな言い方をすると、あいつがここを捨てたように

聞こえてしまうから他の言葉を探すが、

どうもその言葉が見つからない。

思わず吹き出してしまいそうな野望を語るあいつを

ここから送り出したっけ。

だんだん遠ざかっていくあいつの姿は、

波にさらわれていくようで…

ボォーッという轟音が室内まで響き渡った。

続きは会ってからだな。

少し湿ったジーパンが、しつこく食い込んでくるのを

不快に思いながら乗り場へと向かった。

8/2/2025, 3:10:54 PM